私は、中学生の頃、テニスの部活動に明け暮れていた。私が組んだダブルスのペアーは、1年生の頃からパートナーであり、ライバルのような関係だった。
地区大会に出場できるのは、3チーム6名だった。シングルで強い順に選ばれ、ペアーが組まれた。私たち二人は、1年生の頃からその6名の中に選ばれ、先輩達と共に地区大会に出場した。
ライバル二人が、ペアーになったのは、2年生になってからだ。私たちは、最強のペアーと自負し、3年生をも打ち破った。その頃の私たちは、一つ勝つだけでも喜び、3年生に勝つと大喜びだけしていた。テニスが楽しくて仕方なかった。
そして、3年生になった。私は、テニス部の副部長になり、私のパートナーは部長になった。
部内では勝つのが当たり前になっていた私たちペアーが、2年生と組んだチームと練習試合をした。私たちがそうであったように、後輩の2年生にも優秀な選手が現れるようになったいた。
それでも私たちは、圧倒的な力の差を見せつけ、簡単に1セットを先取した。次のセットも順調だった。マッチポイントが近づいた頃だったように記憶している。
私のパートナーが、サーブをミスした。ダブルフォルト。
次のサーブもダブルフォルトだった。2度連続のダブルフォルトは、私たちには珍しいことだった。
そのダブルフォルトが何と3度連続した。私の中で、何かが崩れた。
次のサーブの時、今度は私がスマッシュをミスした。そして、遂に並ばれた。
それから、私たちは、パートナーではなく、ライバルになっていった。ミスした味方が許せない感情がお互いに生まれたのである。
私たちは、初めて敗れた。
試合が終わり、二人はお互いを非難した。その試合から、私たちペアーは、負け続けることになる。
シングルでは、いつもトップの二人が、その最強の二人がペアーになると、とたんに弱小チームに負け続けるようになった。私たちは、テニスが嫌いになりそうになって、一時ペアーを組むのを止めた。
それぞれ別のパートナーとペアーを組むようになった。でも、最後に戦うのは、いつも彼のチームとだ。私たちは、何度かパートナーを変えたが、それでもいつも最後に争うのは彼のチームだった。私たちは、完全にライバルになった。
その二つのチームが、トップ2として他校との練習試合に出るようになった。ところが、二つのチームはいつも全敗した。部内ではトップ2のチームが他では通用しなかったのだ。
私たちは、最後の大会を前に、再度パートナーを組むことにした。私は、彼が苦手な前衛に徹することにした。初めは、口もきかずに、試合に臨んだ。
ミスをしても、点を取っても、声をかけず、感情を出さなかった。険悪なムードで試合をした。私は、ライバルとして、私が先に点を取ることだけを考えていた。恐らく、彼もそうだったのかも知れない。
パートナーがミスをしてなじるより、自分が点をとってパートナーに見せつけようとしてのだ。
テニスとは、不思議なものだ。自分が点を取ろううが、パートナーが点を取ろうが、リードしている時は、パートナーのミスはどうでもよくなる。感情が影響する簡単なスポーツで、勝っている時は、誰にとっても簡単なスポーツである。
ようは、負けている時、ミスをした時の感情をどうコントロールするかである。
中学生の私たちには、3年生の最後の大会を迎えるまで、そんな簡単なことが理解できないでいたのだ。
私たちは、何試合か勝った時、二人で話をした。「ダブルスは、二人と二人が戦うスポーツだ。味方のはずの一方が、敵になれば、一人対三人になってしまう。これで勝てるはずがない」
私は、その後、順調に勝ち進み、県大会のダブルスで3位に入賞した。
でも、私たちが、感情をどうコントロールするかに気づくのは遅すぎた。そして、同時に、気づいても、結局はコントルールなど出来なかったのだ。出場した関東大会では、見事一回戦で大敗した。手も足も出なかった。
帰りの車では、二人は口も開かず、楽しかったのか、辛かったのか、後味の悪い終わり方をした。私たちは、結局、持ち味の技量を100%発揮できず、感情という見えない敵に破れたのだ。
私は、一生に残る「味方のはずの一方が、敵になれば、一人対三人になってしまう。これで勝てるはずがない」ということを学んだ。そして、同時にライバルがペアーを組むということの難しさを思い知らされた。
会社経営をしていると、このような場面に何度も出くわす。何で、こんなに身内や、社内のことで、労力を費やすのかと。この労力が外部に向かわなければ、会社は勝てない。
内部へのエネルギーはマイナスであり、大きく体力を消耗し、果実という成果を生まない悲しく惨めな感情だけが浪費される。
「味方のはずの一方が、敵になれば、一人対三人になってしまう。これで勝てるはずがない」。これは、会社経営においても、あてはまることである。そして、社内でのライバル関係も良い結果をもたらすことは難しい。
あの夏から30年以上たった。先日再会した彼は、私と同じくテニスの似合わない腹の出た中年になっていた。
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投稿者 :堀田信弘: 2008年8月13日 06:16
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