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障害者について  「活・喝・勝」


やってやれないことはない

私の長男は、中学3年生である。今年、高校受験を向かえる。と言っても、息子の通う学校は、公立の小中高一貫校だから、入学試験は形式的なものである。

それでも、試験に備えて、4月から猛勉強を開始した。1年間かけて習得するのは、自分の名前を漢字で書けるようにすることである。

息子が小学部に入学した時、彼が話すことができた単語は「パパ」だけだった。障害者認定時には、3歳以下の知能程度と診断された。

それから6年間で、ひらがなを覚えることができた。その後、2年間でカタカナまで理解できるようになった。

そして、この一年間で、自分の名前を漢字で書こうとしている。

彼のような自閉症の子には、名前を漢字で書くことが難しいのではない。なぜ、名前が漢字に変わるのかを理解することが大変なのである。

彼は小さな頃から、家族から「そうちゃん」と呼ばれていた。

だから、彼が初めて自分の名前を理解できたのは「そうちゃん」だった。しかし、小学部に入り「そうし君」と呼ばれるようになると、誰が呼ばれているのか理解できなかった。

「そうちゃん」と「そうし君」が同じ自分を指していることが判らないのである。それでも何度も何度も呼ばれると、自分には二つの呼ばれ方があることを次第に理解できるようになってくる。

そして、ひらがなの勉強を開始した。あいうえおと順番に言えるようになり、言ったり聞いたりした単語をひらがなで書けるようになっていった。

ところが、名前を書かすと「そうしくん」と書く。「お名前は」と尋ねると、「そうしくん」と答えるのだ。「くん」も含めて自分の名前であると思っているのである。

「くん」をとって名前をひらがなで書けるようになるまで6年を費やした。

そして、今年は、「創史」と漢字で書く練習を開始した。彼にとって「そうし」と「創史」がイコールであるはずもない。言ったり聞いたりした単語をひらがなで書くことは理解できるようになったが、言ったり聞いたりした単語を読めも書けもしない漢字で書く理由が判らない。

なぜ、こんなことをさせられるのか意味不明である。

4月から彼は、毎日毎日漢字を書く特訓に入った。何度も何度も書かせても、何が書いてあるかさっぱり判らない。それでも、一筆づつ書く練習を繰り返す。一画一画を何度も何度も、ゆっくりゆっくりと書かせる。

6月1日、彼は15歳の誕生日を迎えた。家族で誕生会を開いた。

そこで、何が書いてあるか判らないが、これまでの成果をお披露目することにした。

奇跡が起きた。

見事に書くことができた。しかも、書順も完璧だった。

これまで、彼は何度も奇跡を起こしている。

あんなに靴下の裏表の違いが判らなかったのに、ある日突然、間違えないようになった。そして、今では、家族の洗濯物までたたんでタンスにしまうことができるようになった。9年間通い続けたスイミングスクールでは、10メートル以上も泳げるようになったのだ。

3歳程度の知能までにしかならないだろうと言われていた。ところが今では、その倍の6歳程度まで成長している。

人間の力は無限である。

不可能なことはない。

やってやれないことはない。彼は、やれるもやれないもその違いを知らない。ただ知っているのは、できたことへの喜びだけである。

我々健常者はどうか。やれないことが先によぎる。やれることしかやろうとしない。とてつもない年月がかかる努力には苦痛しか感じない。

私は、やってやれないことはないと心底から信じている。信じていれば救われる。奇跡は起こるのだ。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2008年6月14日 10:07




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