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嬉しい出来事  「活・喝・勝」


刀を突きつけられる経営者

先週一週間は、一年中で最も暑い時期を向かえたばかりのホーチミンにいた。

とても嬉しいことが二つあった。

ひとつは、知り合いの日本人経営者と、私の事務所の前で出会った時。

「いつもみんな遅くまでとても良く頑張っていますね。心配するくらいに一生懸命だ。ここまでにするには大変だったでしょうね。」

褒めて頂いたので、単純に嬉しかった。ここ数ヶ月間、このような言葉が聞こえるなど、想像もしていなかったからだ。この言葉の正反対にいた感じだ。周囲からは「それがベトナムでは普通だ」と聞かされ、そんなはずはないと信じてやってきたから、嬉しかった。

先月も、ベトナムのお客さまから「こんな会社はベトナムでは見たことがない」と褒められた。

それを成し遂げた、現地の責任者である妹に感謝した。

そして、もうひとつ嬉しかったのは、その妹の成長だ。

数ヶ月前まで一緒に食事に行くと「仕事の話はしたくない」と言っていた。「休みの日は仕事のことは離れたい」と言っていた。彼女の中では、仕事は苦しいもので、楽しいものではなかったのだ。

ところが先週、「仕事が楽しくて、好きで仕方ない」という信じられない言葉を聞いた。

経営者は、社員と恋愛合戦という勝負をしている。経営者は、社員に愛される会社にするために努力する。社員に愛想を尽かされれば、社員は辞めて行く。経営者の仕事は無限であり、無期限である。永遠に終わりのない勝負に挑んでいる。

社員にとって最大で、最後の意思表示、それが退職届という刀である。その刀を突きつけられた経営者は、社員のその想いをどう受け止め、第二、第三の退職届けが出ないように何を成すべきか、そのことを考えられるか。

社員にとって最大で、最後の意思表示であることを放置する経営者は失格である。

その理由の如何ではない。給与であれ、他の仕事をしたいと言うのであれ、家庭の事情であれ、社内の人間関係であれ、その理由を改善できる会社ではなかった、それが答えだ。他の会社ならそれが叶うと信じて辞めて行く。

その会社は、社員にふられたのである。失恋したということだ。経営者は、社員との恋愛合戦に破れ、社員は去っていた。経営者は、失恋したのだから、悲しまなければならない。

経営者は、人を切ることができる刀を持っている。私は、かつて、その刀の使い方を十分に理解していなかった。振れば切れるその刀の、切られた側の痛みと、切った際に飛び散る返り血の多さを知らなかった。特に、返り血の意味については、たった一人で会社を作るまで理解できていなかった。

経営者が、社員を家族のように大切にし、家族のように愛するというのなら、試しに会社を家庭に例えてみよう。

社長は会社の想いを伝え、社員は自分の考えを伝える。こうして入社のための面接が行われる。そして、お互いの合意が取れた時、会社に入社する。家庭に赤ちゃんが生まれたのと同じだ。

社員が一方的に入社を望んだのではなく、その人物を認めて家族の一員にした。経営者は、家族の一員になったその子供を、誠意を持って育てる義務がある。子供に栄養を与え、教育を与え、育てる。

やがて、反抗期を向かえる。中には、親の希望通りにならない子だっている。親の想いは身勝手であり、高望みをし過ぎる傾向がある。

ならば、親は、その子をどうするのか。出来ない子を、言うことを聞かない子を、捨てるのか、あるいは殺すのか。

口先だけで、社員を家族同然などと言うものではない。

私の知り合いの女性社長は、絶対に社員をクビにしないと宣言している。自分が選んだのだから、クビにすれば、自分が自分を殺すようなものだと言った。その社長は、人を切る刀を放棄した。

経営者には、刀を持っている人とそうでない人がいる。しかし、その何れの経営者の会社であっても、そこにいる全ての社員は会社を切ることができる刀を持っている。

どの経営者でも、ダメな会社なら社員に切り捨てられるのだ。だから、経営者は、切り捨てられないように社員と勝負しているのだ。

どんな理由であれ、自分が選んだ社員を失うことは悲しい。自分が、やり甲斐と楽しさと、それと満足行く給与と、様々な環境整備をしてあげられなかった結果なのだから。

経営者にとって、社員が、一時でも会社を好きになってくれることはとても誇らしいことである。しかし、それを永続することは、極めて難しく、極めて稀なことなのかも知れない。

ドリームクラスター・グループで、最も給与の安い妹が、何かを得てくれたことは、感慨深い。

「ここまでにするには大変だったでしょうね。」と妹に返したい。

私も、妹に負けないような、刀を突きつけられない経営者になりたい。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2008年4月 6日 23:14




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