昨晩、私は今年最初のベトナム出張から帰国した。
帰国の朝、私は、午前5時過ぎから事務所にいた。起きたのは2時だ。その前日の出来事が、自然に私にそうさせたのだ。
その出来事の二日前のことである。
私はこれまで、遅刻、早退、欠勤の多さについて、何度も何度も注意をしてきた。それでも効果がないので、その日、社員に問題提起をした。
「月に20回以上も遅刻早退する人がいる。その人の勤務時間は、月平均して一日8時間を満たない。有休もないのに、平気で欠勤をする人もいる。ここにいる全社員の合計勤務時間は、一日8時間を満たしていない」とホワイトボードに大きく書いて、通訳を入れて説明した。
「さらに、夕方5時の時点で、今日中に行わなければならない仕事が残っているのに、残業をせず帰ってしまう人がいる。」
「私たちは、お客さまの仕事をしているんだ。お客さまからの仕事を放り投げるようでは、お金は貰えない。お金が貰えなければ、仕事を放り投げる人には給与が払えない。仕事が残っている時に自分の都合で帰ってばかりでは、この会社は潰れる」
「しかし、この中には、一部ではあるが、一度も遅刻も欠勤もしていない人もいる。さらに、早く帰ってしまった人の残作業を、一部の人だけが残って作業しているんだ。自分だけが良いのではダメだ。誰だって早く帰りたい。だから全員が、遅刻せず、仕事が残っていたら残業するようにしてほしい。そうすれば皆が早く帰れるのだ。」と説明した。
私は、これまでに何度も何度も説明してきた。ところがどうしても、改善されない。遅刻、欠勤をしたらボーナスを出さないと言っても効果がない。
そこで私は、「明日の朝から、土曜日の出勤分を平日に振り返る。土曜日の分として一日1.5時間分を、作業に当ててもらう。朝は一時間早めて7時出勤、帰りは30分遅らせて5時30分退社とする。その代わり土曜日は出なくても良い」と宣言した。
翌日の朝、私は、6時から事務所で皆を待った。
次々に出勤してきた。7時になって遅刻したのは、二人だけだった。
そして、夕方の午後5時30分を向かえた。一人の社員が、「何人かが社長と話をしたいと言っています」と告げてきた。
私は、この事態を想定していたので、その人の前に、ホワイトボードを移動した。そして、「何が聞きたい」と告げると、その瞬間、他の社員も続々と集まり、ついに全員が揃った。集団交渉の始まりである。
その中のひとりが、「一日9.5時間働くことは出来ません」と言った。私は、「疲れるから残業ができないのか。それともその後に用事があるから残業ができないのか。私たちは、お客さまの仕事をしているんだ。お客さまから頂いた仕事が残っていて、帰ることはできない。帰ってはダメだ」と応戦した。
次々に、不満が噴出される。その都度、私は、声を張り上げて、同じことを何度も説明した。それでも納得行かない。
「これは業務命令だ。社長の命令である。」と私が最も口にしたくないことを告げた。「命令が聞けなければ辞めるか」
何時間も続く。「どうして、皆はこの問題のことなら、何時間でも残れるのか。これは皆の生活がかかっているからだろう。私は、皆の前で話すことが仕事だ。この仕事のためなら、皆が納得するまで朝まででも話そう。私は、何時間でもOKだ」
一人の提案を受け入れ、「それでは、明日の朝から元に戻そう。その代わり、明日から一ヶ月間、全員が無遅刻、無欠勤であること。それと、5時になった時点で仕事が残っていたら、その日の分は終わるまで帰らない、これを約束できるのなら、納得した人から帰って良い」と告げた。
納得できないような顔をして、全員が渋々帰っていた。
私は、その晩、中々眠りにつけなかった。そして、直ぐに目が覚めた。午前2時、帰国の準備を始め、暗闇の中、事務所に向かった。
6時45分、一人のアルバイト女性が出勤してきた。「今日から8時に戻ったんだよ」と説明すると、「そうですか」と言って、直ぐに仕事に取り掛かった。
私は、夕べのことがあったので、社員がストライキを起こして、誰も出社しなかったらどうしようと考えていた。だから、一人が出勤したのでホットした。そのアルバイトの女性に「君の大学には、うちでアルバイトをしたい人はいますか」と尋ねた。
「社長、この会社は、とても学生に人気のある会社です。皆働きたいと思っています。私が何人かに聞いてみます」と日本語で答えた。
私は、この言葉を聞いて、なぜか涙がこぼれた。自分でも涙の意味は判らない。
私の命令は、正しかったのだろうか。なぜ、私の意図は伝わらないのか。通訳を入れても、なぜこんなに言葉の壁は厚いのだろうか。
午前8時になった。全員が遅刻をしなかった。私がタクシーに乗り込むと、全員が笑顔で見送ってくれた。
そして、今回私は、二人のベトナム人社員を日本に連れてきた。彼らには、日本の厳しい現実が待っている。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
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投稿者 :堀田信弘: 2008年1月12日 09:48
単純に文化の違いではないでしょうか。
彼らは自分のために働いているのだと思います。日本に
来て一番驚くことは、ビジネスディナーが頻繁にあるこ
とだと言われています。
仕事にどの程度重点を置くか。個人間の差ではなく、国
の違いが大きいかと思われます。おそらくある程度生活
できる賃金があれば十分で、その代わり、自分の趣味や
好きなことに使う時間を大切にしたいのではないでしょ
うか。一部の人は、仕事が生きがいとなっているかもし
れませんが、彼らの多くはそう思えないのでしょう。
一方で、それだけ仕事に熱心な人材が多いと思われます
ので、堀田様の会社は人気があるのかもしれません。
ただ、それだけ自分の時間を削って、仕事に使っている
ので必然的なことなのかもしれませんが。
また、日本の働き方は人生にとって何か大切なことを見
失っているのではないかと思うことも、多々あります。
投稿者 ルビー : 2008年1月12日 18:28
はじめまして。もうかれこれ堀田様のブログにはおそらく2年半ほどお世話になったでしょうか。
私は7月から自営業を営んでおりますが、以前勤めていた会社の管理職時代には何度も何度もブログ内の言葉に救っていただき、心の支えに努力できました。本来ならばもっと早くに感謝の言葉を伝えるべきでしたが、今でもあなたのファンです。
伝えたいことがたくさんありすぎて、何から書いてよいのか整理できていませんが、私は堀田様を信じていますし、自分自身の生き方にも信念を持っています。それをまわりからいかに笑いものにされようが、それが私の最大の武器であり最大の長所であると信じています。
堀田様、どうか負けないでください。あなたは私の未来像です。
勝手なことを綴り、誠に申し訳ありませんでした。
泉 卓也
投稿者 泉 卓也 : 2008年1月12日 16:32
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