元々無かったものなのだ。人は、無いものを得ようとし、得たものを守ろうとする。元々無かったものであるのに関わらず、得たものを失うことに恐れをなす。
失うことは、元に戻ったに過ぎない。失うとはそういうことである。失うとは、決してマイナスになることではないのだ。単純に何もなかったゼロ地点に戻るだけである。
こんな理屈を並べるのは簡単だ。理屈で判っていても、現実にはそう簡単に割り切れるものではない。ならば、この理屈を判っていなければ、なおさらである。
失うことを、マイナスになると感じる。全てを失って、これで全てが終わりだと嘆く。得たものを、永遠に得続けようと考えるから、失った時のショックは大きいのである。ショックが大きいと予測できるから、失わないように守ろうとするのであろう。
でも、元々無かったものなのだ。
元々無かったものなのだから、無くなっても慌てる必要はない。
そんな気持ちを持つことは、ベンチャー企業には重要なことである。そして、いつまでこの気持ちを持ち続けられるか、持ちつけられている間がベンチャー企業である。この気持ちが無くなったら、もはやベンチャー企業とは言えない。
私は、生涯ベンチャー企業を目指したい。攻めて攻めて、戦って、開拓して、新しいことに挑戦する、これがベンチャー精神である。この精神をやり続けられる以上、企業規模も業暦も関係ない。
攻めて攻めて、戦って、開拓して、新しいことに挑戦するには、”失うことを恐れない”ことだ。
経営は、攻めも守りも重要だし、そのバランスが大切だと言う人がいる。しかし、”失うことを恐れない”は、守りよりも攻めを重視する。
サッカーで言えば、点を取られないことよりも、点を取ることに重きを置く。例え1点リードしていても、2点目を取りに行く。逆に何点取られていても、点を取ることしか考えない。ベンチャーが、1点先行した時点で、守りに入ればそれは負けを意味する。
設立して間もない会社、若い会社というだけでは、ベンチャー企業とは言えない。ベンチャー(Ventures)を直訳すれば冒険である。どんなに経営者が若くても、どんなに新しい会社でも冒険できない会社は、ベンチャーとは言えない。ベンチャーでない会社は、私にとって、何の魅力も感じない。
残念ながら、わがグループの会社も含め、冒険できる経営者は少ない。経営者が冒険できないのだから、会社が冒険精神を持てるはずもない。
なぜ、冒険できないのか、それは失うことを恐れるからに他ならない。
地位か、折角手に入れた豊かさか、家族か、やっとの想いで積み上げた成果か、そんなもの元々無かったものなのに、なぜ。失いたくないからに違いない。
残酷な言い方をすれば、人間は、人間である以上、全てを失う。大好きな人と結婚して、子供が出来て幸せになっても、必ず別れはやってくる。どちらが、誰が先かは判らないが、死を迎える。事故の場合もあれば、病気の場合もあるが、別れは一瞬だ。早いか遅いか判らないが、必ずその時は迎える。何れ失う。
でも、失うことをなど、考えているはずもない。必ず失うことだから、そこから逃れられないし、守っても防ぎようがない。いつそれが訪れるか、それを知っていたら、恐ろしく生きていられない。知らないからこそ、今を、この今をただ楽しく、ただ一生懸命に生きられるのである。
死に別れ、そんな究極な失うことを日々考えている人などいないだろう。失うかも知れないと目の前に迫らなければ、恐怖は訪れない。
それなのに、なぜ、失いたくないと考えるのだろうか。必ず失うものなのに。元々無かったものなのに。
私が考える、失うことを恐れないと言うのは、失うことを知っているということである。
だから、私は、手に入れた瞬間から、何れ失うことを考える。逆に言えば、私ほど失うことを恐れている臆病者と言えるかも知れない。でも、失うことを常に頭に入れているからこそ、失わないようにするのではなく、失った時にどうするかを考えている。そのどうするかという考え方、それが私の場合には、次々に新しいものを発見すること、冒険することなのである。
元々無かったものなのだ。失ってもマイナスになるのではない。元々のゼロに戻るだけだ。マイナスにならないのだから恐れる必要はない。ゼロになることを知っていれば、恐れないで済む。
元々無かったものなのだ。だから、今それを手にしたとしても、それで安住するのではなく、次を探し続けるのだ。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年10月10日 09:51
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