私は、今回の旅行のために、前日にビデオカメラを購入した。そのカメラを持って、行き先々では、風景や建物、子供たちの様子を毎日数時間も撮影した。ハードディスクタイプのカメラなので、媒体の交換もせずに、たっぷりと旅の記録が取れた。
ポーランド旅行の最後食事は、クラクフ市内のポーランド料理店で行うことにした。旧市街地の近くにあり、ポーランド民謡が見られる店ということもあって、事前予約が必要なほどの人気店である。
最後の晩餐は、少し豪華に、賑やかなポーランドの歌でも楽しみながら食事をしようと思った。
お店へは、滞在したホテルから歩いて20分ほどの距離。
夜7時、静かな公園の中を通り、旧市街地に向かう。綺麗な夕日と公園、遠方に見えるヴァベル城をバックに、撮影する。ベンチに座って、店の予約時間まで30分ほど待つことに。
そして、お店に向かう。
予約席は、踊りを踊る舞台の目の前。
メニューを見たところで忘れ物に気がつく。ビデオカメラを公園のベンチに置き忘れた。
慌てて公園に駆け戻ったが、ベンチの上には既に無くなっていた。
もしかすると、誰かに届けられているかもと、直ぐそばにある交番に駆け込む。
片言の英語で説明するが、通じない。日本語の通訳を呼んでくれると言うが、明日の10時にならないと来れないと言う。私たちが帰るのは、明日の午前4時だから、それでは間に合わない。
しかも、ここは交番で、全ての情報は、中央警察署にあると言う。仕方なく、タクシーで、中央警察署に向かう。
警察署は、大通りから中に入った小さな広場の一角にあった。日本の警察署と違って、表から見ると、そこが警察署であることが判らない。大きな木のドアがあり、窓も見当たらない。
恐る恐る中に入ると、玄関が薄暗い。カウンターがあって、警察官がいるカウンターの向こう側だけに電気がついている。カウンターのこちら側は、犯罪者席のように真っ暗。
ほとんど通じないながらも、カメラが無くなったことは理解してくれたようだ。
「中に入れ」というジェスチャーとあわせ、ポーランド語で指示される。通されたのは、取調室そのもの。
英語もろくにできない私なのに、ポーランド語の調書に名前や住所、職業などの必要事項を記入させられる。
会話が通じないから、調書ができるのに、2時間ほどかかった。結局、その調書を元に、明日の朝、すべての交番からの情報を確認するとのことだった。
結局、それでは間に合わない。何のための2時間だったのか。
お店のショーは終わり、妻と子供たちはホテルに戻っていた。私は、夕食も食べられず、ショーも見ることもできず、ホテルにタクシーで戻った。
空しい気分になる。
子供たちも悲しそうな表情だ。
でも、私は言った。「もう忘れよう。最後の夜に悲しい気分になると、すべての旅が悲しいものになる。ケガをしたわけでもなく、命を取られたわけでもない。もう忘れよう。」
これも旅の思い出だ。
わずか15年ほど前の共産主義時代のポーランドには、秘密警察があった。その時のような雰囲気が少しだけ味わえただけでも良い思い出だ。
思い出はビデオの中にではなく、心の中に残る。
心の中に残った思い出は、悪いことでも時間が立てばきっと笑い話になる。
今回の件で、私はまたも自分の予想範囲を広げることができた。失敗することは、多少の失敗は驚かなくなる。これもまた経営者の重要な要素だろう。
こうして、ポーランドの旅は無事終わり、大きな土産話もできた楽しい思い出でとなった。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年9月 4日 08:02
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