アウシュビッツ強制収容所は、クラクフから約60キロ離れたオシフィエンチムという町にある。アウシュビッツというのは、オシフィエンチムのドイツ語名である。
アウシュビッツには、最初に作られた第一収容所(アウシュビッツ収容所)と、第二収容所、第三収容所があった。
最初に見学するのは、オシフィエンチム駅の近くにあるアウシュビッツ収容所。28棟の建物に、2万人もの人が収容された。
収容される人々は、アウシュビッツに着くと直ぐに囚人服に着替えさせられ、荷物を奪われた。奪われた荷物や衣服は、トランク、靴、ブラシなどに仕分けされた。収容所には、おびただしいほどの量が仕分けられて山積みになっている。
さらには、遺体から取り出された義足や義手、メガネ。そして、女性の髪の毛が山積みになっている。その髪の毛で、カーペットや織物が作られていた。
ナチスは、第一収容所だけでは不足したため、1941年、アウシュビッツ収容所から2キロ離れたビルケナウに第二収容所を作った。第一収容所の何十倍もの広さで、300棟もの収容施設があった。肉眼では見渡せないほどの広さだ。そこには、数十万人もの人々が収容されていた。
アウシュビッツは、現在国営の博物館となっている。見学の時に説明してくれたのは、博物館で唯一の日本人である中谷さん。彼は、見学しただけでは判らないことを色々と説明してくれた。
私は、彼の説明を聞くまで、アンネの日記に代表されるように収容された人々のことしか想像していなかった。中谷さんの説明によれば、収容された人は、全体のほんの一部だと言う。
収容者が、駅に着くと、男と女、子供に別けられた。子供が13才以下に見えれば、母親と一緒にそのまま毒ガス棟に行く。また、年寄りや障害者など労働ができない者も同様に毒ガス棟に連れられて行った。
毒ガス棟は、シャワーを浴びるようにカモフラージュされていて、一度も収容されないまま死んで行った。殺された人は、何百万人。ユダヤ人などは、証拠が残らないように一家丸ごと殺されたから、その数は今でも判っていない。
見学者たちは、皆神妙な面持ちで、施設の中を見て回る。声も出せないそんな雰囲気だ。
そんな中、障害を持つ私の息子が「キャハ、キャハ」と笑い声を上げた。
その時、ある一人の外国人が息子を注意しようとした。すると、中谷さんはとっさにポーランド語で何やら説明し始めた。
中谷さんは、私に言った。「ここでは、息子さんのような障害者は、必要ないと殺されたのです。平和になった今でも、人間は誰でも差別しようとします。そこにいる杖をついたお年寄りを誰も助けようとしません。この場所にいる時くらいは、それではダメだと声を出せるようになりたいものです」
中谷さんは「私だって、もし当時この場所に居たら、声を出すことは出来なかったはずです。でも、今は、誰でも言えるはずなのです」と続けた。
私は、アウシュビッツに来た目的のひとつが達成された気持ちになり、目頭が熱くなった。
ナチスは、純血主義という名のもとに、批判的な人、同姓愛者、障害者、使えなくなった老人、まだ使えない子供たちを虐殺した。しかも、実際に手を下したのは、ドイツ人ではない。
収容者の見張り役も、ガス室で殺す係りも、遺体を燃やす係りも、全て収容者の中の人々を使った。少ないドイツ人で大量の収容者を管理する仕組みにしていたのである。
収容されている人間が、自分は殺されまいと同じ収容者を殺す。殺すことで生き延びさせようとした。殺した人も殺された人もナチスの被害者だった。加害者であるナチスは、実際に手を下していないから、加害者の意識は無かったのであろう。
息子を注意した外国人も、「声を出さないで」と良かれと思って言ったに違いない。誰も悪くない。でも現実には、誰かが悲しむ。
もし、私たち家族が、アウシュビッツに連行されていたら、騒がしい子供と、それを止めようとする私も含め、一家丸ごと殺されていたに違いない。
私は、新潟の中越沖地震の被災者の様子を見て、もし私たち家族だったら、障害のある息子が避難所に入ることはできないだろうと考えていた。同じ被害を受けても、他の被災者の方に迷惑や苦痛を与えるのではと考えてしまう。
もし、私たち家族が、中越沖地震に遭遇していたら、私たちは避難所には入らなかったかも知れない。
アウシュビッツは、人間が犯してはならない過ちを、人間の性というべき自然な形で犯してしまった。それは、誰もが犯さないとは言い切れない、悲しい人間の性である。
私たち健常者は、ナチスと何が違うのだろう。ヒットラーだって、選挙で選ばれた指導者だった。選んだのは、自由な投票の元で選んだ人々である。
現在でも、選挙で選ばれた先進国の大統領が、テロとの戦い、自国を守るためにという大義名分のもと戦争の決断をしている。大虐殺されたユダヤ人が移民した国であるのにも関わらず。
悲しい。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
感謝。 毎朝6時に社内朝礼ブログをこちらで公開しています。こちらもご覧頂けたら幸いです。
この内容に共感頂けたらこちらをクリックして下さい。ありがとうございます。
※このブログは日本最大級の社長動画サイト賢者.TVのランキングで堂々第一位となりました。
投稿者 :堀田信弘: 2007年9月 2日 08:49
http://www.hottaworld.com/mt4/mt-tb.cgi/487